チェリーと家族の拒食症
チェリーの摂食障害は思春期にはじめたダイエットがきっかけになります。
完璧主義のチェリーは自分の身体を完全にコントロールできることが誇らしく
受け入れられたい、認められたい、完全でありたい、という思いから、次第にダイエットがやめられなくなります。
ある日娘の姿がアウシュビッツの捕虜のようであることに気づいた両親は、チェリーを病院へ連れて行き、極端なダイエットに干渉をはじめます。
「どうして自分の身体を自分の好きにしちゃいけないの」
「どんなことになったって、パパたちのいいなりになんかなるものですか」
「食べたくないものまで食べさせられるなんて、絶対イヤよ。
自分で体重をコントロールをしなきゃ、意味がないもの」
完全に身体を自分でコントロールしたいと思うチェリーと、チェリーの身体を心配する両親は泥沼の戦いを始め、そしていつの間にか事態は完全にチェリー自身の手に負えなくなります。
やめようと誓っても、どうしてもやめられない、下剤や嘔吐の習慣。
家族は完全に疲れ果ててしまいます。
「いや、ママお願いよ!あきらめないで!私を見捨てないで!ママ、お願い!」
そんな中でチェリーは新しい恋人ダンと出会います。
拒食症について受け入れ、二人でなら病魔を追い払えるだろうといってくれたのです。
「この人は本当に私を変えてくれるかもしれない」
チェリーはダンと二人で始める生活に希望を持ち、悪癖は絶つことを新生活の希望にかけて誓います。
しかし、一時収まることはあっても、気がつくと自分の意志に反し、時には犬の餌までガツガツと貪り食いをし、下剤を使い、過剰な運動をし、極端な食事制限をするチェリー。
そしてダンに見つかると、自分に驚き、絶望し、心から悔恨の涙を流します。
「まさか私がこんなことをするなんて!ダン、本当にごめんなさい!」
何度も繰り返される改心の誓いと、それを裏切る食行動、嘘、万引き、などの癖はダンを次第に苛立たせていきます。
「私の妻でいたいのなら、少しは生活を変えなくては!
このままキリスト教徒としての結婚をつづけたいんだったら、
私が家長となり、君は従順な妻でなくちゃいけないんだ!」
チェリーはそれに同意し、ダンは最低体重を決め、生活と食べるものを監視します。
それでも監視の目を盗んでは繰り返される異常な行動、嘘。
万策尽きた、と絶望する二人は高名な専門カウンセラーを訪れました。
二人は少しずつ気づきをもたらされていきます。
カウンセラーは言います
「他人を完全なコントロールのもとに置こうとするのははじめから無理なのですよ。
コントロールする方も、される方も、ただ苛立つだけです。
コントロールされる方に、それに従おうという気持ちがなければ、全て無益なことです。
チェリーは他人からコントロールされる状態を望んでいながら、
同時に、そのコントロールから何とか逃れて、
自分ひとりで歩こうと苦闘している典型的な例なのです」
チェリーは体重をめぐる長い戦いが自立の試みであったことに気づきました。
ただ、方法が非常に自滅的なやり方であっただけなのです。
チェリーは思います。
「人は、自分から好んで憂鬱になることだってできるのだ」
でもダンは、このような自由は決して許しませんでした。
それがどんな自由だろうと、どんな代償を払おうと--。
私はやっと、二人がともに変わることが必要なのだと気がつきました。
少しずつ、チェリーに独立心が育っていき、気分の落ち込みも減ってきます。
両親を遠くに押しやって自分ひとりの力を楽しむようになります。
健康を回復し、体重が増えてきます。
増えた体重に対する自己嫌悪ゆえに状況は一身一退しながら、長い時間をかけて体は快方に向かっていきます。
時々下剤や嘔吐をしてしまっても、その癖にあまり振り回されなくなりました。
ダンは拒食症を単なる精神病として片付けることをやめ、なぜ痩せたいと思うようになったのか、真剣に理解しようとし始めます。
そんな日々の中、チェリーはある日、実家に帰省し母親と口論になります。
「ガタガタ言うんじゃないわよ」
「この家でそんな口をきくもんじゃありません。分かってるの!」
私はこの家にいる間は、相変わらずおりこうさんでなくてはいけないようです。
せっかく芽生え始めた自信もしぼんでしまうような気がしました。
ついに私の怒りが爆発しました。
「いったいいつまで私を子ども扱いしようっていうの!
どうしておとな扱いできないのよ!私はもう24歳よ!赤ちゃんじゃないわ!」
ああ、ついにいってしまった!
この何年か、いおういおうと思いながらもいえなかったことを口に出していったのです。
私はとうとう独立を宣言したのです。
そしてこの日を境にして親子関係は変化します。
チェリーは拒食症から完全に立ち直り、自分の人生に責任が持てることを証明したのです。
この文章はチェリー・ブーン・オニール著
「拒食症を克服した私」より内容抜粋して作成したものです。
---この本について---
内容については、あともう一歩の踏み込みが足りない、というのが正直な私の感想です。
大スターパットブーンファミリーの長女の著書で、実名で出版されているものなので、
おそらくチェリーの家族に対する思いや記憶の中に
意識的に避けて書かれなかった重要な部分があってのことなのでしょうが、
分析に今一歩の踏み込みがされていない部分があります。
また食欲を我慢できないことが意志の弱さからくるものだというような
(私個人としては猛反対を掲げている意見の^^)記述も多少見られます。
ですが、家族との密接なつながりの中での摂食障害、
それも本人の視点から分析しながら書かれた本というのは、稀少ではないかと思いますので、
「家族と摂食障害」について考えておられる方には何か
摂食障害に関する理解のヒントになるところもあるかと思い、
このような記事を作成してみました。
評価としてあともう一歩、ではありますが、類似の本の中では良書と思います。

