HOME摂食障害の本などのご紹介>「やせ願望」の精神病理 2 なぜ女性はやせたがるのか

「やせ願望」の精神病理―摂食障害からのメッセージ」より
「第一章 なぜ女性はやせたがるのか」の紹介です。

摂食障害に関連する一般書は良い本ほど手に入りにくいんじゃないか、という気がするのですが、
この本ももう出版されていないものです。
アマゾンマーケットプライスで確認した時は、中古品にも関わらず発売時の価格の倍から十倍程度の値段がついていて、飛びのきました。
幻の名著っていうやつなんでしょうか。
なぜ、何も考えていない私がたまたま定価以下でぽこっと手に入れることができたのかも、
今となっては謎です。(ここで紹介せよ、という使命?・・・・笑)
運がよかった。

「なぜ女性はやせたがるのか」という疑問に対して
今まで出されてきたいくつかの仮説についてまず述べています。
そして臨床家としての著者はそれら仮説は「部分的に正しいものもありましたが有害に働いた仮説の方が多かった」と述べています。

代表的な説とそれに対する著者の解釈は以下のようなものです

○幼児期の母子関係や「成熟拒否」
幼児期の母子関係に問題があるため自立した大人としてやっていくだけの能力がなく、
大人になることを拒否して子どものままでいようとし、食べ物をとらなくなる。
あるいは、母親への嫌悪感から母親と同じ「女性」になりたくない、と性的成熟を嫌悪する、という解釈。
→事実として誤りであると同時に様々な弊害を生んできた。
最大の問題は母親のせいにされることによって家族関係にあらたなひずみを生んできたこと。
父親の責任回避、母親の過剰な罪悪感、患者本人の母親への恨み。
そして全員の「取り返しがつかない問題である」という絶望。

○社会進出が女性のストレスになっている
女性の社会参加と摂食障害が同時期に増えていることを単純に解釈して
「そもそも社会に出て働くというライフスタイルが女性にはあっていないのだ」とする主張。
→女性にとって働きにくい社会であるために、働く女性のストレスが高いと言うことが摂食障害の増加につながっている可能性もあり、仕事だけが直接な原因とはいえない。
「女は働くべきではない」という価値観の押しつけは女性たちに抑圧感や罪悪感という新たなストレスを加えるという弊害が起こる。

○幼少期の性的虐待
幼少期の虐待、特に性的虐待が原因であるとする説。
→虐待を含む家族関係の問題が摂食障害へとつながった人は少なからず存在するが、
それをもって全ての摂食障害を説明することは不可能。
むしろ「虐待」という言葉と結びつくことによって必要以上にセンセーショナルな病気であるような印象を植え付けるという弊害を生んだ。


臨床の場に視線を変え、実際の女性たちをみてみると
母親に不満があるわけでも、社会進出に悩んでいるわけでも、虐待を受けた経験もない
多くの普通の女の子たちが気軽にダイエットをしているのが現状です。

では、摂食障害の患者が持つ「やせ願望」と健康な人が持つ「やせ願望」は違うのか?

著者はこのように述べます。
「多くの摂食障害を治療してきた経験から、摂食障害における「やせ願望」も拒食症の一部(後述する「制限型」の拒食症)を除いては、基本的に通常の「やせ願望」と質的に変わるものではないと確信しています」

ではなぜ女性はやせたがるのか?

過食症が始めて論文として報告された1979年頃には、西洋文明社会では「スリムな女性は美しい」「肥満=自己コントロール能力に欠ける」という図式が定着していました。
90年代にはスーパーモデルと呼ばれる一般人離れしたプロポーションを持ったモデルたちが注目の的になります。
雑誌におけるダイエット特集が活発になり、女性たちは「体型というのは自分の努力次第でいかようにもなるもの、そしてやせていないということは、その努力を怠っているということである」という観念を抱くようになります。

著者はこの「やせ願望」を作る要因として「自己コントロール願望」というものがかなり大きな割合を占めると感じています
「摂食障害になる女性たちも痩せたスタイルそのものを夢見ている場合もありますが、どちらかというと、きちんと自己コントロールできる女性像を追い求めていることが多いようです。」

そして近年の「無駄なものをなくしてシンプルに生きる」というライフスタイルの流行も、
「自然流」に細い体を維持していることが大人の女性としての知性と成熟を表すものだ
という風潮をつくるのに一役買います。

ここに「やせ願望」は単なる外面的な問題ではなく、
「自己コントロールができる」「シンプルなライフスタイル」など
内面の美の追求をともなうものとなってきました。

さらに体重によって数値化することの可能なダイエットを達成感を得やすいこと、
痩せすぎモデルばかり登場するメディアの影響も挙げられています。

なぜこれほど極端な「やせ願望」が流行しているのか、そしてその流行を食い止めて女性たちが健康な身体を持てるようにするにはどうしたら良いのか、そのことを真剣に考えなければならない時が来たのだと思います。

「やせ願望」の精神病理―摂食障害からのメッセージ
「やせ願望」の精神病理―摂食障害からのメッセージ


「やせ願望」の精神病理 関連記事一覧
 1 紹介
 2 なぜ女性はやせたがるのか
 3 破綻したやせ願望
 4 摂食障害の治し方
 5 対人関係療法
 6 コミュニケーション分析の実際
 7 回復へのプロセス
 8「やせ願望」とジェンダー
復刊リクエスト

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コメント

こんばんは。
毎日拝見しています。あと5回の連載も楽しみにしています。

体重のように数値で表されるものってわかりやすい。だから、ついついそこに執着してしまうんでしょうね。

いろんなものを見ていると、全てにおいて(ってのはおおげさかもしれませんが)メディアの影響力っていうのはすごいモノなんだなぁ...と感じています。

スーパーモデルにしても、ブランド物を持つことにしても、流行りの「ライフスタイル」って言葉とかも...

最近、すごく思うに。
私の子供時代。昭和の母親って「お母さん」って感じだったでしょ??
でも、今は違う。みんないかに「私は子持ちでもこんなにキレイなんです!」って見せるために頑張ってる。

子供に関しても、良い服を着せ、お受験にチカラを入れるのもメディアの影響なんではないか...と。

女性がどんどん進出してるなかで専業主婦って、やっぱりどこか引け目を感じてしまう部分もあるわけですが、そんな中においても...ここで「カリスマ主婦」の登場。
「主婦でもこんなに輝いちゃってる私」として頑張らねばならない。
そして「出産してもスリムな体を維持する私」「アンチエンジングな私」
そこには決して「おばさん化」することは許されていません。
これもメディアの影響・大ですよねぇ??

あ、ちなみに↑上記の綺麗なママのお話はもちろん私のことではありませんことよ(苦笑...)

とまとさん、ありがとうございます。
四苦八苦して要約しております。

そうですよね
「とても子どもがいるようには見えない」といわれたいとか
「とてもその歳には見えない」といわれたいとか
ようするに中身と外見が違っていることが今の価値基準に合致するわけで
何が何でも「ありのままではない」ってことに焦点をあわせたら
どこまで行っても苦しいばかりに決まってるじゃないかーーーっと思うのですが。

女性ばかりがやたら不利なルールのゲームに放り込まれているのは
確かにメディアの影響だと思います。

子どもにとってはママはママだってだけで
充分綺麗な存在なんですけどね。

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