HOME摂食障害の本などのご紹介>「やせ願望」の精神病理 4摂食障害の治し方


「第三章 摂食障害の治し方」の紹介をします。

ここでは症状と遺伝的性格の傾向を踏まえた上で
それら性格を抑えつけることなく生かし尊重する形で
摂食障害の治療する方法について大きく見ていきます。

「摂食障害」とひとくくりにされても
背後にある「やせ崇拝」という社会的重圧は同じでも
「食べなくなる」ということと「大量に食べて排出する」って
何かが違うよな、とずっと漠然と思ってたんですが
こんなに鮮やかに説明している文章は初めてみました。
びっくりです。

社会的要因、遺伝的要因、環境要因、生物学的要因
全てについて理論的な目配りがされています。
とにかく興味深いのだ。

○治療の基本的な考え方
摂食障害は社会的因子の上に遺伝的因子と
個人的な環境因子(個人的ストレス)があってはじめて起こる病気です。
社会的因子にについては個人の力で今日明日に解決できるものではありませんから
ここでは、遺伝的因子を認識しながら個人的ストレスを解決するための方法を述べていきます。

「拒食の要素(体重を低く保とうとする要素)」と
「過食の要素(過食や嘔吐や下剤乱用をする要素)」
に分けて治療を考えていきます。

制限型の拒食症の人は「拒食の治療」だけをすればよく
現在過食症の人は「過食の治療」だけをすればよいのです。
過食嘔吐型の拒食症の人は「過食の治療」と「拒食の治療」の両方を組み合わせます。
※制限型の拒食症の人でも回復過程で一時期過食気味になることはありますが、
これに関しては「過食の治療」はまったく必要ありません。

○拒食の要素への取り組み方

「拒食の要素」を持つ人は「損害回避」と「固執」が高い人です。
本当は頑固で自分のやり方が確立している(固執)のに、
さまざまな事情や周囲の人の思惑に気を遣ってしまい(損害回避)
思い通りにできていないことが息苦しいストレスになります。

そういう自分の危機をアピールするための
無意識の「ハンスト」が拒食症であるともいえます。
また体重と言う数値に対する一種の「恐怖症」という側面もあります。
特に恐怖する理由はないのに、どうしても怖い、というわけです。
これは「損害回避」と大きく関連しており、
ストレス度が高いときの方が出現しやすい問題です。
生まれ持った性格がストレスのために自分を幸せにする方向に作用していない状態といえます。

・ストレス軽減のために我慢をやめる
「拒食症」の人がストレスを軽くするために三つの点に注意します
1、生活の中で自分のやり方やペースを乱されているのはどの部分か
2、自分の希望や不満をきちんと相手に伝えているか
3、自分の希望や不満を「わがまま」「自分勝手」と思って遠慮していないか
自分の主張が「わがまま」であるかどうかは本質的な問題ではなく、
とにかくその主張をしっかり表現して自分の運命をコントロールしていくことができない限り
精神的な健康は実現しないと言えます

・拒食症の症状そのものについてだけは少しずつ我慢を必要とする
「ストレスの軽減」が治療の主要ポイントですが、
「拒食症」には「体重恐怖症」という側面もありますから
ストレスを軽減すると同時に恐怖症そのものについての治療も行います。。
著者の行う治療法では体重測定をやめてもらい
(代わりに医師だけがチェックし、
体重増加が顕著なときのみ本人に報告することを約束)
今までの食生活に加えて毎日ヨーグルト一個を食べてもらいながら
対人関係の問題を解決していきます。
そのうちにだんだんと食べ物へのこだわりが取れて体重は順調に増えるようになります。

○「過食の要素」への取り組み方

「過食」の人の特徴は「新奇性追求」と「損害回避」がともに高いというものです。
心のアクセルもブレーキもともに強いため
ストレスが溜まった状態ではブレーキが勝ってしまい
「やりたいけれどもできない」というジレンマに陥ってしまうのです。

まずは自分の「性格」がアクセルもブレーキも強いものであることを自覚し、
目標を「アクセルがブレーキよりもやや強い状態にもっていく」ことにおきます。

第一歩は「ストレスを軽くしてブレーキを弱めること」
第二歩は「意識してブレーキをはずしていくこと」です。
その作業をしていくうちに、
自分は必要なときにはブレーキを外すことができるのだ
という自信がついてきて、これが自己志向につながっていきます。

過食を抑えつけないことも重要です。
過食嘔吐はこの病気の本質ではなく、精神的な辛さのひとつの指標に過ぎません。
「本当の問題」が解決したあと、一番最後に治る症状です。
過食嘔吐から先に治るものではありません。

なお過食はストレスからばかり起こるものではなく、
充分な炭水化物や脂肪をとっていない人は生物学的にも過食におちいります。
この過食を抑えるにはとにかく食事の量を増やすしかありません。
(制限型の拒食症の回復期にみられる過食がこれにあたる)

○家族がとるべき態度
摂食障害の効果的な治療法は患者のコミュニケーション能力を向上させ、
自己表現がうまくできるようにすることと言えます。
家族の姿勢もこの目的にあったものであることが必要です。
そして忘れてはならないことは
「自分の気持ちがきちんと表現できて相手に理解されたか」
が心の満足にとっては重要で、
実際に自分の思い通りになったかどうかは
精神的健康にとって本質的な問題ではないということです。


※次章ではストレス軽減のための具体的な治療法、対人関係療法についてのべます
「やせ願望」の精神病理 5対人関係療法

「やせ願望」の精神病理―摂食障害からのメッセージ
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 3 破綻したやせ願望
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 8「やせ願望」とジェンダー
復刊リクエスト

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