「やせ願望」の精神病理 5対人関係療法
「第四章 対人関係療法--ストレスの原点に迫る」の紹介です
対人関係のストレス改善のためコミュニケーション方法について考える章です。
ちょっと摂食障害と話がずれてしまうのですが
私自身の体験からどうしてもひとつだけ言いたくなってしまうことがありまして。
関係の中にモラルハラスメントの要素があるときは
むしろコミュニケーションの努力はすべきでないと私は考えています。
いかなるコミュニケーションをはかっても絶対に話の通じない人というのも現実にいます。
相手が明らかに異常性格で、それによって自分が傷ついているのであれば
どうか何もせずにまず逃げてください、
ということを強く主張したうえで
それを踏まえて、今日のコミュニケーション改善のお話です
○対人関係療法
対人関係療法では最も身近な他人である「重要な他者(家族や恋人)」との関係、
そして「現在の」対人関係に絞りこんで治療を行います。
コミュニケーションの方法を改善してより快適な対人関係を作っていくことによって
ストレスを軽減し自己評価を高めて摂食障害を治療するというのが対人関係療法の考え方です。
・治療の三つの原則
1、痩せたい気持ちや過食嘔吐そのものについてはあまりじっくり話し込まない。
→「痩せたい気持ち」や「過食嘔吐」はあくまでもストレス度を現すものとして考えていきます。
2、自分の周りの人たちと自分との関係をよく考えてみる
→相手が自分に期待していることと自分がやりたいことがずれていないか、
自分が相手に期待していることは相手に伝わっているか、などという風に考えていきます
3、積極的に治療に参加する
→自分の周りの状況に変化をおこすように試みる、
自分の気持ちをよく振り返り言葉にしてみる、
という二点の努力が必要になります。
対人関係をめぐって問題のおこりやすいよっつのパターンは
「悲哀(喪失体験)」、「対人関係上の役割をめぐる不和」
「役割の変化」「対人関係の欠如」という四つがあげられますが
摂食障害では殆どが「対人関係上の役割をめぐる不和」があてはまります。
どんな人間関係でもお互い相手に何らかの役割を期待しているものですが
相手に期待していることと、相手本人の希望との間にずれが生じていたり
相手に期待していることと、相手が「期待されていると思っていることが」ずれていたりする
ケースを「対人関係上の役割をめぐる不和」として扱います。
「とにかく食べて健康な外見になってほしい」という家族の期待と、
「太れば全てが解決するとおもってほしくない」という患者本人の気持ちのずれに現れるように、
摂食障害にはこの問題がもっとも多く見られます。
家族の気持ちは語られるが、患者本人の気持ちは「やせる」という現象によってしか語られない
というコミュニケーションパターンを背景に摂食障害という病気が起こるのです。
このケースでは不和の段階によって治療は変わります
・話し合いの意志はあるがそれが不適切でうまく行っていない場合は
コミュニケーション方法の改善をすることで解決をもたらそうとする。
・理解を諦めて沈黙してしまっている場合は話し合うことでお互いのずれを明らかにして解決を目指す。
・あまりにも違いが明らかで関係が続けられないのであればきちんと終わらせる。
といったように状況に応じた治療になります。
○コミュニケーション分析
より効率的なコミュニケーションができるようになるために
コミュニケーション方法を検討して失敗を見つけていく方法としてコミュニケーション分析が行われます。
これは治療者がいなくても可能です。
自分の会話をできるだけ正確に思い出し(できれば紙に書いて)、
どのようなパターンのコミュニケーションをしているか明らかにします。
よく見られるコミュニケーションの問題には次のようなものがあります
・曖昧で間接的な非言語的コミュニケーション
→ため息をついたりにらみつけたりすると言う方法。
言葉を使おうとしなければ「ずれ」に向き合って話し合うこともできません。
・不必要に間接的な言語的コミュニケーション
→イヤミ、婉曲なものいいなど。
誤解を招くこともありますし、「ずれ」にきちんと向き合うこともできません
・コミュニケーションしたという間違った憶測
→言いたいことをはっきりさせなくても自分の気持ちがわかっていると憶測するパターン。
「わかっているはずなのに」という不満が募り、ずれは広がるばかりです。
・自分が理解したという間違った憶測
→相手のメッセージが不明確なのにそれを確認しないというパターン。
一方的な思い込みによってずれは広がっていきます。
・沈黙
→怒りや不快を表現せずに沈黙してしまうというパターン。
沈黙と言うのはすなわちコミュニケーションの打ち切りであり、
もっとも不誠実な対応えあるともいえます。
誤解を招くというレベルではなく、何も伝わらないからです。
破壊的な可能性を持つということを充分に認識する必要があります。
対人関係で困難に直面した時は
「やせたい気持ちが強くなる」「過食がひどくなる」など
症状のことばかり気になるますが、
症状が強まるときはストレスが高まっていると考えるべきであって
そんなときこそ対人関係に注目する必要があります。
ストレス度が高まると症状に逃げてしまう自分のパターンもわかるようになります。
病気の症状と言うのはコミュニケーションという観点からみると
それ自体「非言語コミュニケーション」であり、
メッセージ性を持っています。
しかし正確に理解されることはまずないコミュニケーションパターンといえます。
摂食障害の治療とは症状の力を借りずに
言葉で自己表現できるようにすることであるともいえるでしょう。
こうすることによって自己評価も高まりますし、
やせることへのしがみつきも軽くなってくるのです。
(なお拒食症については、前章に説明したとおり対人関係ストレスの軽減と同時に
少しずつ体重を増やしていくというようなアプローチも必要になります。)
次回記事で対人関係療法について実際の例について引用しながらもう少し詳しく述べます。
→「やせ願望」の精神病理 6コミュニケーション分析の実際
「やせ願望」の精神病理 関連記事一覧
1 紹介
2 なぜ女性はやせたがるのか
3 破綻したやせ願望
4 摂食障害の治し方
5 対人関係療法
6 コミュニケーション分析の実際
7 回復へのプロセス
8「やせ願望」とジェンダー
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コメント
うちの母との会話がまさにこの例のようです。
投稿者: yui-520 | 2007年05月22日 13:14
yuiさん
短い一言に色々感じます。
身近な存在であればあるほど難しいですよね。
実際のコミュニケーション分析の一例を記事としてアップしてみました。
何かヒントになる部分ないかな。
投稿者: ノラ@管理人 | 2007年05月22日 21:39