HOME摂食障害と一緒に生きる>摂食障害と家族

こんな悲しい話を聞いた

同棲しているカップルの彼女が摂食障害
何年も一人で苦しんでも治らないので
彼に協力を頼んで一緒に病院へ行ってもらう
初めて二人で行った病院で
彼が治療者に言った言葉は
「彼女は過食を我慢できないんでしょうか?」
聞いたとたんに彼女は泣き出してしまった、という話

勇気を出してはじめて一緒に行った病院で
彼が一番知りたがったことが
「彼女は我慢できないのかどうか」ということだったというのは
辛かったろうな、と思う

ひとつの家で、密接な関係の二人が暮らす中で
食べることや、吐くことや、食べないこと、が行われているのであれば
それに対して「どうして我慢しないの」ということは
「この関係をよくするのは君の仕事なんだ」と言って
コミュニケーションから手を引いているのに等しい

なぜ、彼女が
「言語でコミュニケーションをとることが難しい状況にいる」
ということについて、共に暮らす彼が疑問を持たないのか

彼女がその家の中で
自分に許されていると感じる僅かな手段を行使して
何かを表現しようと試みているという
その必死の努力と苦しみそのものを、なぜ彼は無視しているのか
そして「彼女の我慢」というところに全ての問題を隠蔽しようとしているのはなぜか

彼女の苦しみをあえて「分かりたくない」という、その気持ちは
彼女の病気の問題ではなく、彼の心の問題だ
もしも二人の関係をよくしたいと思うのであれば、
それはどちらか一人だけの仕事として押し付けることはできないはずだ。

摂食障害はそうして隠蔽されてきた
危険なほどつめこむ、全てを吐き出す、異常なまで痩せようとする
という、特異な表面だけをあげつらい
「自分の意志でなんとかするしかない」
「わかって欲しいことがあれば言葉で言えばいい」
といえば問題は完全に個人だけに帰されてしまう
間違いなく重要度を持って関わっているもう一人の存在については
巧妙に隠され、症状を出した者だけが有罪を宣告される

隠蔽された問いかけは
「なぜ彼女はあなたと暮らす生活の中で
よりつらい表現の方法を選ばなければならなかったのですか」

摂食障害さえ治れば何もかももっとよくなると決めて掛かることによって、
二人の関係のために「彼女だけ」が変わることを待っているのであれば
「摂食障害の症状」に頼って、ありのままの現実から目をそむけているのは
実は彼女ではなく、彼なのかもしれない

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