HOME摂食障害の本などのご紹介>「鏡の中の少女」 2

「鏡の中の少女 1」の続き
小説後半部分の紹介です。

高カロリー輸液によって医学的な危機をなんとか乗り越えながら、
カウンセラーのシャーマンは病院と連携を取り、
フランチェスカの強迫観念をなんとか解いていこうと話し合いを続けていきます。

「自分を守るために、今言ったようなトリックを使い出すとするだろう。
そしたら、もっと守りを固めるために、トリックを増やしていくだろう。
トリックをいっぱい使おうとしたら、そのための時間を前よりももっとたくさん使わなくちゃいけない。
そのうち、なんのためにそんなトリックをしていたのか、わからなくなってくる。
でもやめることもできない。
だって、やめたら、もう安心できなくなっちゃうからね。
トリックをが増えると、トリックをこなしていく時間が増えて、ほかのことをする時間がなくなる。
それで、すぐに僕の生活はトリックだらけになってしまって、ひとつでもやり損なえば恐ろしくってしかたなくなってしまうんだ。」

「体重が増えすぎるのを怖がるっていうのは、すごく理屈に合っているような感じがするかもしれないけれど、ケサ。
でも体重を凄く減らしすぎて、死ぬところだったよね。
じゃあ、肥りすぎるのを怖がるっていうのは理屈に合わない。
理屈に合う恐れっていうのは、危険が消えたら消えてしまう。
きみは、すごく危険だったけど、その危険はもうすっかり消えている。
なのに、まだ怖がっている。
だから、きみが怖がっているのは、肥ることとは違う別のことだと思うんだ。
ねえ、体重が増えすぎるのが怖いって思い込んでいるだけなんだよ。
だって、本当に恐れていることを考えるより、体重を恐れていることの方が楽だからね。」

「さあ、鏡をみようよ」
ケサはびっくりした。
シャーマンはケサをドアの裏についている鏡へ引っ張っていくと肘をつかんで持ち上げた。
「この腕。これがそんなに太いかい?ちょうどいいかい?それとも、やせすぎている?」
「ちょうどいいのと、やせすぎの間くらい?」ケサは答えた。
「じゃあね、十人に公平な意見を訊いたら、なんて答えると思う?」
「やせすぎ?」
「なんでそのひとたちはそう答えるんだと思う?」
「なんて言わせようとしてるかわかってるわよ
そう答えるのは、私が凄く痩せすぎているから。そう言わせたいんでしょ?」
「じゃあ、きみは痩せすぎてて、みんながそう思っているのに、どうしてきみだけがそう見えないんだろうね」
「なぜなら、わたしが狂っているから。そうなのよ。もう答えたでしょ。わたしは狂ってるのよ。さあ、気がすんだ?」
「狂ってるって、どういうことだか知ってるのかい?」
「クルクルパーでいかれてるのよ。これで気がすんだ?」
「狂うってことは感情がちゃんと働かないってことだ。
狂うってことは、自分の頭が自分自身にトリックをしかけ、自分自身についてまちがった情報を流し、それから、いつまでも消えないまちがった恐怖を与えることなんだ」

ケサの治療のために家族間の葛藤を明らかにすることが必要と考えたシャーマンは
父ハロルドと母グレース、姉のスザンナを交えて家族面接をします。
そして家族はいつも問題児だった姉のスザンナをめぐって言い争いをする間
フランチェスカが一人家族から離れて、その争いには絶対にまきこまれずにいるということを指摘していきます。


「でも、フランチェスカは心配なんていらない子です。いつだってすばらしくいい子です」
ハロルドはくいさがった。
「すばらしいというのはどういうことなんでしょうか、デートリッヒさん。
そのためにケサが無視されるとしてもですか」
「でも、悪いことで、関心をひくのとはちがいます。」
「関心をひくというのは、正当なことです、デートリッヒさん。
無視されるというのは不当なことです。
最近のケサがどうしているのか、見てください。
この数ヶ月、ケサはこれまでの人生の中で絶対なかったほどの関心を集めました。
じゃあ、それを失ったら回復する意味ってのはいったいなんなのでしょう?
実際、みなさんがやっているのは、ケサを病気のままにしておくものです。
ケサが良くなれば、みなさんは、またケサを忘れ、もとどおりスザンナを心配し、 スザンナと言い争い、スザンナに関心を向けるでしょう。
みなさんがケサに良いことも悪いことも、関心をむけるようにならないなら、 ケサが回復して健康な少女にもどる可能性はありません。」

「強迫観念や強迫行為については、わからないこともたくさんありますが、
はっきりしているのは強迫観念に駆り立てられる人というのは、ほかの人が自分をどう思っていても、そして自分をどんなふうに扱っても、じぶんからは全然影響を与えられない、どうしようないと感じていることです。
そういう人は、人間関係に救いがないと感じています。
それで、自分の内的世界に追い返されてしまい、
その中でまわりの人が自分についてどう感じているかをコントロールするために魔術的な儀式をするのです。
そして感情的に孤立して、自分の欲求にも他人の欲求にもふれ合うことなく生活することになります。
 ご家族として、ケサが危険を犯して自分の欲求を表現するのを助けてあげなければいけません。
ケサが精神的に頼ってくるのを励ましてあげねばなりません。
簡単なことじゃないし、一夜でできることでもありません。」

高カロリー輸液で体重を増やし、
自ら食べる努力も少しずつ進め、
そして家族面接により感情をおもてに出す、ということも学び始めたフランチェスカは
なんとか退院までこぎつけます。

シャーマンが部屋から出ようとしたとき、ケサが呼び止めた。
「サンディ」
「なに?」
「これからも電話していいの?」
シャーマンはケサのそばに戻って、まだ薄い頭をなでた。
「いつだって電話していいよ、ケサ。どうしてか、わかるかい?」
ケサはにっこり笑った。
シャーマンが待っている答えがわかっていたからだ。
「わたしは人の関心をひくために、病気にならなくてもいいから、じゃない?」
「君は人の関心をひくために、病気にならなくてもいいからさ」

鏡の中の少女
鏡の中の少女

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コメント

こんにちは。

この間はありがとうございました。
ノラさんがはっきりと
「やりたいことしなよ」って言ってくれたから
逆にすっきりしました。^^
結局、懇願されて今年一杯はここにいることにしました。
自分もそれでとりあえずは納得しました。

鏡の中の少女。
私結構フランチェスカです。というかぴったり。
自堕落な姉がいて、私はいつも
しっかりものの妹でしたから。
補導されたこともあるけど、
その時も特に怒られたりしなかった。
姉はしょっちゅう怒鳴られてたんですけども。
逆に姉が起こしたことに対する愚痴とか母に聞かされてました。
ものわかり良くなるしかなかったです。
母の味方でいてあげるしかなかったですね。
私この本読みたいです。

みやさん
この本には「鏡の中の孤独」という
回復期編もあるんですよ。
このあとフランチェスカは過食期を経ていくらしいのですよね。
今取り寄せ中で、それもここでご紹介したいな、と思っています。

残るにしろ、出ていくにしろ
どちらにしてもそれなりの葛藤があるんだろうけども
うん、要するに大事なのは「自分で決められるんだぞ」ってことだよね^^。

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