自分の身体を受け入れられないとき 2 「ハングリーセルフ」
「自分の身体を受け入れられないとき 1 掲示板から」より続いています
家庭から、仕事のために外へ出ようとしたとたんに突然
今まで受け入れてきた体が恥ずかしくなった、
という大柄の女性の話が出てきます。
家庭の中では「ゆったりと仕立てた服」を着て家族のために食事を作ることで
長い間を過ごしてきた女性です。
あるとき、職業訓練をする会社の所長になることとなり、その初会見に出かけるとき
突然「恥辱の服--垂れ下がった色あせたもの」が一杯詰まった洋服ダンスの前で
一時間も立ち尽くしてしまいます。
信じてもらえるかしら?
私は一度も寸法を計ってみようなんておもいついたことがなかった。
食べるんだけど、自分のことをデブとは言わずに、丸ぽちゃと言っていたの。
主人は”寛大な女性”が好きなの。
それに子供にとっては、母親は当然いつでも世界中で一番きれいな女性でしょう。
私がどんな風に生きてきたかというと、朝から晩まで手を口へ、という生活で、クッキーの缶に手をいれ、その手を口へ入れ、とやっていました。
私が家にいるのなら、それで何の問題もおきないわけでしょう?
でもこれからの人生について専門家の女性と話す予約をしたその日に、突然私はサックドレスやムームーを着る丸ぽちゃさんではなくなったの。
一瞬にして、私はデブで、太りすぎて、グロテスクになってしまったの。
後になって振り返って、私はその時自信がなくて、何か足りない気がしていたんだ、そこが私には場違いな気がしていたんだとわかったわ。
五十四歳の太った女が、自分よりも半分も年下で、やせて、きっちりした服を着て、悠々と生きている女性の学部長に会いにいけるわけがないでしょう。
そう、今なら、長い間体を大目にみて暮らしていた私が、突然自分をデブだと思ったのは、自分への疑いと不確かさのせいだったと言えるわ。
でもその時はただ”サリー、やせなくちゃね”と思っただけ。
その日、私は実は約束を断ったの。
やせられるまで約束を延期しました。
それからどうなったかおわかりでしょ?
よく聞く話とおもうでしょうけど、私、やせました。
でもそれまでに摂食障害になっていたの。
吐いたり、下剤を使ったり、拒食したりはしなかったけど、私の心はカロリー計算のことで一杯だったから、 やっと大学院に入るまで、他のことにはなんにも熱中できませんでした。
この論では「自分の身体を受け入れられない」ということは
アイディンティティの不確かさの問題である、という風に捉えています。
家庭においては昔から女性に期待された役割というものがあり、アイディンティティは安定する、
(ただし女性の社会における自己発達の希望は押し込められ、
家族に食事を作る、与え続ける、ということでその空虚は埋め合わされる)
一方社会というのは、つい最近まで女性にとって排他的であった世界であり
未だ社会に入る女性にとってフィットするアイディンティティの確立がされていない。
摂食障害は女性のこれらの不確実性、埋もれた苦痛、
打ち明けられないアイティンティティの混乱の現われである
という風に分析しています
(ところで日本においては、男女雇用機会均等法ができたのが1985年、
差別的な扱いが法律で禁止され、女性が家から離れはじめます。
そして今日までおよそ20年の時が流れていますね。)
そして、もうひとつ、興味深い論なんですが、
女性が摂食障害になって食べ物とボディサイズに熱中すると、
それによって社会における自己発展を放棄して
自らを家庭に閉じ込めることができる、ということにも注目しています。
「女性の社会進出」ということに関しては実は私はあんまり考えたことがなくて
摂食障害と絡めてしまうとピンとこなくなったりするんですが
ただ、ちょっとその枠をはずして「アイディンティティの不確かさ」というレベルにすると
かなり実感としてわかるようになってきます
そうするとこれは、順序が逆なんですよね。
冒頭のような
「太っていることに対する社会の軽蔑・侮蔑・非難が怖いから痩せていなくては」
という気持ちではなく、
「社会における自己の不確かさ」が体型に関する強迫観念を生み出しているのではないか、
という考え方です。
自分のことを思い出してみると、自分を「太っている」と感じる時って
本当に何かに自信をなくした瞬間に、パチンとスイッチが入るようにして
「太っている、太っている」という観念に頭の中が占領されることがあるんです。
「この人は私を見るといつも太っていると言うから、この人嫌いだ」
というような感じではなくて
「きっとこの人は今私のことを太っているって思ってるんだろう、ああ隠れたい」
みたいな、根拠のない、単なる強迫観念であるケースって多いんです。
それに関してはやっぱり外からきたもの、実際の軽蔑・侮蔑・非難などではなくて
内側からきたもの、それこそ、自己の不確かさとか、場違いであるという感覚
などではないかな、って思うんですよね。
それから拒食の場合でもそうですよね。
実際に太っていてそのことに対して差別的発言をする人が周囲にいるのであれば、
「軽蔑・侮蔑・非難」を恐れるのは現実の恐怖といえるかもしれませんが
現在痩せていて、それでも「軽蔑・侮蔑・非難」が怖いのだとすれば
それは体重が何キロになっても決してなくならない「現実的ではない恐怖」
「内側から来る恐怖」ではないか、といえると思います。
だから私個人としては掲示板に頂いた書き込みのことも
「ハングリーセルフ」に書かれている内容のことも
どちらもわかるし、実際両方あるんじゃないのかな、って思ったんですね。
そうだとして、では個人として
「じゃあ、どうやって生きていこうか」と考えたときにまず取り組めるのって
まずは、「ハングリーセルフ」に書かれているアイディンティティの問題のほうに取り組むことじゃないのかな、って思ったんです。
問題の正体が「自己の不確かさ」とか「場違いな感じ」とかであれば
それをなくすことはできなくても、
「太っているという強迫観念」や「摂食障害」から切り離してみることはできますよね。
「今、太るのが怖いと感じた私の中では何が起こっているんだろう」
ということに注目していく、ということですね
そういうことを、掲示板を見ながら思ったんですけども
皆さんはどう思われるでしょうか。



コメント
記事を早速読ませていただきました。
私の書き込みに対して、深く洞察してくださりありがとうございます。
・・この記事の内容について非常に深く深く自分に問いかけ考えてみる必要を感じています。
全文プリントアウトして、何度も読んでいます。
自分の中でおさまったころに、またコメントを投稿させていただきます。
取り急ぎ、ありがとうございました。
投稿者: asa | 2007年08月01日 13:13
現在肥満している私の場合。
実際に仕事をしている時、仕事関係で誰かと会う、またはプライベートでも何か目的があって誰かと話したり、何かをしているとき、自分の体型や肥満が気になることはほとんどありません。必要であれば誰とでも会えるし、どこにでも行くことができます。水着になるのは嫌ですが。
嫌な思いをするのは、知り合いから、実際に太ったことを相撲取りになぞらえてしつこくからかわれたり、「あなたみたいな体格には(こんなかわいい小さなアクセサリーは)似合わない」とか「あなたは肉布団をまきつけているから寒くないでしょう」などと言われたり、といった経験をしたときです。大人になってからはそんなことは滅多にありませんが。でも滅多にないからこそ何年も何年も目に見えない棘のように、思い出すたびにじくじくと痛みます。
毅然とした態度をとらずに、表面上へらへらと笑っていたから余計にいけないのでしょう。そんな失礼なことを言う相手に怒ったり、傷ついている姿を見せたくない、という妙なプライドもあったり。
自分で確認はしていないのですが、アメリカにはNAAFA:全米肥満地位向上協会、という組織(ホームページには「差別されるだけではなく、つまらないジョークの対象にもなり、深くその尊厳を傷つけられているのです」といった内容の記載)があるそうですが~「センチメンタル ダイエット」高橋秀実 著より~ノラさんのおっしゃるように、「アイデンティティ」とか「内面から来る恐怖」といったこととの関連も確かにあるのでしょうが、そういったことと全く切り離してみても、この社会では、肥満それ自体でかなりの生き辛さ、があると私は思います。
それと、掲示板のほうでノラさんが「あと20キロ太って…」ということを書いてくださいました。でもそうなったら逆に、きっと説得力はなくなるのではないでしょうか。冷笑と憐憫、そして最後に無関心が来るような気がします。肥満した人間からも「そんな風に思えればいいけど(私には無理)」って思われたりして。ジェニーン・ロスも太ったままだったらこれほど広く受け入れられたりしなかったんじゃないか、って。
そんな社会がいいとはいいませんが、現実は現実として…。
投稿者: E | 2007年08月01日 13:33
asaさん
こちらこそ良い問いを持たせていただいてありがとうございます。
また何か思うところありましたら
ご意見お待ちしております。
投稿者: ノラ | 2007年08月01日 15:09
Eさん
「肥満それ自体の生き辛さ」については私もあると思っています。
実際にあるものをない、と仮定したところで何も状況は変わらないですし
そういう意図のことを言おうとしたわけではないんです。
ただ、ほとんどあらゆる体型の人が身体付きのことについて何かしら悪意のあることを言われており
それを何年何十年も忘れられずに現在の生活に影響をきたしているし、
色々な体型の人が自分の身体は当然の敬意を払ってもらうには醜すぎると信じ込んでいる
ということについて考えると、
そういった意味では「自分の身体にたいする受け入れがたさ」と「現実の体重」は
関係ない面というのも実際あるんじゃないかと思うんですね。
私が20キロ太ったら説得力があるか、というのは単なる与太話ではあるんですが
ただ私が思うのは、もし20キロ太って私の言うことに説得力がなくなるのであれば
最初から私の話には説得力がないってことだろう、という風に思うんです。
ただ「説得力ないよ」と反論される時に
「こうで、こうでこうだから」という、
理論的に一応筋の通った反論ではなくて
「デブだからひがんでんじゃん」という
まったく根拠なしの上から目線で否定される可能性が増える、
ということなんじゃないかなって思うんです。
ジェニーンロスがワークショップを始めたのは標準体重より18キロ多かったときです。
(「食べすぎてしまう女たち 第八章」参照)
女性を対象に「痩せないで今すぐ幸せになろう」というカウンセリングを主催されているユズさんは
実際に現在も100キロ越えていらっしゃいます。
(参照→http://step13.cc/)
基本的に体重と説得力は関係ないと私は思うんですけども
でもこういう話をたとえばEさんにお伝えするときにですね
「でもあなたにはわたしの苦しみはわからないのよ」って言われてしまったら
もう、なんか本当に難しいな、とは思うんです。
共通の経験のないところでどこまで共感できるのか、という
どこまで「あなたの痛み」と「私の痛み」の共通点を読み取る力が自分にあるのか、
というのを突き詰めようとすると、やっぱり難しいのは事実ですよね。
太ってみて、「やっぱり私の意見変わりませんでした」って言ったら
その方がわかりやすいのかな、っていう。
そういうお話でした。
(いや、だからそういう体型でコミュニケーションとるのはもうやめよう、
っていう話を私はしてるわけなので、論旨メチャクチャですよね。反省。)
「20キロ太ったら」というのは我ながらいい喩えではなかったです。
すみません。
投稿者: ノラ | 2007年08月01日 15:11
<理論的に一応筋の通った反論ではなくて「デブだからひがんでんじゃん」というまったく根拠なしの上から目線で否定される可能性が増える、>
言葉が足らなくてすいません。そうなんです。そういうことが言いたかったのです。
だってそもそも「デブ」とか「ブス」という言葉を悪意を持って投げかけてくる方々って、要するに「根拠のない上から目線」でものを言うわけですよね?ユズさんも、社会的に大反響、賛成多数!っていうよりもなんだか「イロモノ」っぽく扱われている感じがするし、(そもそも「痩せ」を「モテ」に言い換えているだけ、だし)ジェニーンも確かに最初のワークショップでは18キロ多い体重だったと記載してあるけど、<一人の女性の口があんぐり開きました。別の女性は「どうもありがとう。私、家に帰りますから」と言いました>とも書いてありますよね?で、実際全米でテレビ出演する頃には標準体重になっているのですよね?もし18キロ増のままだったら、ユズさんやNAAFA:全米肥満地位向上協会と同じ扱いだったんではないかなあ、と言いたかったのです。本当のところはわかりませんが。
結局はきちんと聞く耳を持っているような人や、体型にアイデンティティを関係つけない人、またそういう人々との関係性の中では辛い思いをすることもないように思うです。
<「あなたの痛み」と「私の痛み」>ということでは、私にしたところでたとえば100キロを超える人から見れば「なに言っているのよ。あんたなんかまだマシじゃん」ていわれたらそれまで、なわけで。
私の場合、若い頃はともかく今現在は自分が自分を大切に、愛しく思っている上で、他の問題(「アイデンティティ」「自分自身や他からの愛情」等々)とは、(絶対そうかといわれると自信が無いのですが)かなり切り離して、純粋に自分の脂肪と格闘している部分が大きいように思うのです。
だからノラさんのおっしゃりたいことは十分理解した上で、でも今回のような記事を読ませていただいていると「太っているのが嫌、怖いなどというのは体型へのこだわりという形で他の問題を隠しているのでは?どう?」と言われているようで、なんとなく居心地が悪い感じがするのです。いえ、当てはまる方もたくさんいて、そういった方たちはその気づきによってずいぶん楽になるんだろうなあ、とも思います。すごく。
(この感じ、ちょうどノラさんが「摂食障害の原因として親子関係があるはずだ」という意見を提示された場合と似ているでしょうか?)
実は今、ダイエット、体重、過去の過食嘔吐、食事に関して、またちょっと心境が変わる経験をしていまして、よかったらまたメールででも聞いていただきたいな、と思っているところです。ご迷惑でなかったら。
投稿者: E | 2007年08月01日 19:55
色々な方がおりますものね。
押し付けがましかったようで、心からお詫びいたします。
Eさんが、「こういう気持ちでしょう」という意味で提示した意見ではなく
「こういう考え方もある」という意味で、
むしろ賛成反対を含めて意見を聞きたいと思って紹介した見た論のうちのひとつのつもりでした。
ご不快な思いをされたようで申し訳ありませんでした。
(なかなか、様々な立場の人をいっぺんに配慮して記事を書くのは難しい・・・^^。)
私でよろしければいつでもメールはお待ちしております。
投稿者: ノラ | 2007年08月01日 20:39
はじめて書き込みします。
自分の疎外された感覚がどういうものなのかを、この文ではじめて気づきました。
ありがとうございます。
投稿者: sumeragi37 | 2007年08月02日 02:54
sumeragi37 さん
はじめまして
思うところあったら、掲示板などにも参加してみてください。
書き込みどうもありがとうございます。
投稿者: ノラ | 2007年08月02日 08:07
asaです。
この記事を読みまして、本当に数日間深く深く考え込んでいました。
「アイデンティティの問題」ということは、
これまでも幾度も何度も自分に問いかけてきたのですが、どうなのでしょうね・・。
私は現在、結婚していますが、働いてもいます。
仕事は、自分の特技をフルに活かせるものであり、それなりの年数と経験を積んで、
それなりのやりがいと自信もついてきました。
会社においても、割合重要なポジションにおり、自分の力というようなものも、
今はそれなりに感じられている感じで・・・
(それでも、もっと自分のリソースが存分に活かせる仕事が他にあるんじゃないかと思ったりもしますが。)
>一方社会というのは、つい最近まで女性にとって排他的であった世界であり
未だ社会に入る女性にとってフィットするアイディンティティの確立がされていない。
摂食障害は女性のこれらの不確実性、埋もれた苦痛、
打ち明けられないアイティンティティの混乱の現われである
という風に分析しています。
というのは、どうもぴんと来ないんですね。。。
もちろん、もっと若くて経験も自信もなかった時は、
社会における自分の無力感に悩まされた時もありましたし、
そのことが、摂食障害にも関連していたかもしれませんが、
今はどうかというと、ちょっとその頃とは違うと感じるんですよね。
結婚して数年は主人との関係の安定に苦労しましたが、(その頃は摂食障害がめちゃくちゃひどかったです)
夫婦カウンセリングなども利用し(それこそ対人関係療法です!!)
コミュニケーションの改善、信頼関係の構築に取り組んで来た結果、
今も様々な葛藤はあっても、安心感や、愛されているという実感も得られるようになりました。
自己主張する練習、感情を表現する練習も、主人との関係の中で悪戦苦闘しながらし、それなりにできるようになってきました。
そんな経過を経てきた私は、けれども、今でも太るのが怖い。。。
今、私は拒食と、時々の過食嘔吐という、不健康なかたちでかなり痩せた体を維持していますが、やっぱり、太るのは怖いです。
太るのは怖い。痩せていたい。
なんでなんでしょうね??
きっと、摂食障害と一口に言っても、いろいろな方がおられ、
それぞれ年齢的なこともあるし、それぞれの段階があるのだと思います。
私は、あと一体、何が問題なのだろう?
何がそろわないのだろう?
何かまだ隠された問題があるのだろうか?
自分が気がついていない問題がまだまだあるのだろうか?
アイデンティティの問題も、自分がもうあまりないと思っていても、
本当はまだまだ不安定なのだろうか?
いろいろ考えますが、よくわかりません。
ノラさんの記事を読んで、感じたことを書かせていただきました。
ありがとうございました。
投稿者: asa | 2007年08月03日 09:51
asaさん
ありがとうございます
確かに世代によって突き当たる問題というのは代わってきますよね。
仕事が安定しているかどうかって凄くアイディンティティの問題と関係していますよね
でも仕事がうまくいって、自分の社会的な位置に関して安定感のある人は摂食障害になりにくいのか、
というと、
まさにasaさんの問い
「家庭も幸せ、仕事も順調、私は、あと一体、何が問題なのだろう?」
っていう言葉、よく聞くんです。
「あと一体、何が問題なのだろう」という問いこそが答えなんじゃないかってくらい
「今幸せなんだけど・・・」という人が多くいらっしゃるんですよね。
うん、そういうことについても考えていきますね。
ありがとうございます。
また何かご意見あったら聞かせてください。
投稿者: ノラ | 2007年08月03日 10:50