「ヘアスプレー」レビュー
ヘアスプレー DTSスペシャル★エディション (初回限定生産2枚組)
「ヘアスプレー」見てきました。
ええとですね、とりあえず、
今公開されている地域の方は見てきてください^^
私、画面そのものの印象と
「ビックサイズの女の子のシンデレラストーリー」
という売り込みから考えて
「キュートなおでぶちゃんが魅力的に歌って踊る楽しい映画」
なんだろうな、というくらいの認識で見てきてしまったのですが、
単に「楽しい」「ワクワクする」を超えてぐっと来ました。
本当に全編楽しい雰囲気の、コメディなんですけども
なんとなく、何度か途中で泣きそうな気持ちになったんですね。
「楽しく生きようとする強い意志」って、感動するもんですね。
あまりにも個性的で魅力的なのでぐっときたわけです。
「楽しく生きていけたらいいなあ」と思う人、というのは結構いますけども
「楽しく生きる意志」を持つ人、って少ないように思います。
私、実はここでご紹介しようと思ってその参考にパンフレットを購入したんですが、
パンフレットを書いている人がどうも内容良く分かってないみたいなのでがっかりしたんです。
まず、いきなり書いてあるのが、
「ダンスだってオシャレだって申し分ない彼女の問題はただひとつ、その”Big”なサイズだけ」
「愛すべきカン違いヒロイン」
って書いてありまして、
この人は何を見てこういう文章書いたんだろうか、と思ったんですけど。
映画全編を通して”Big”なサイズが問題になっているところは一箇所もありません。
「痩せたスタイル」こそが流行であって、
太っている、というのを理由に嫌な思いをさせられる、
様々な不安を抱えなければならない人(主人公の母親はサイズを気にして何年も外に出ていない)
というのは映画の中で一つの大きな流れとして取り上げられているものですが
この映画を魅力的にしているのは
そのような環境の中で主人公のトレーシーが
「人と違うって素敵なこと」という確固たる考えを持っており
流行という風見鶏がどっちを向いていても自分が魅力的であることにはまったく影響しない
と素直に感じている点、です。
「太っている人に対する差別がある」ということを
「Bigなサイズだけが問題」という言い方はしないですよね。
問題なのは差別の方であってサイズではないですから。
周囲が「痩せているのが流行だから痩せているのがいいのだ」
という価値基準の中で動いていることに流されずに、
自分の信じる価値に基づいて積極的に生きることも
「愛すべきカン違い」とは言わないですよね。
むしろ「カン違い」であるのは、「流行」さえ守っていれば
自分の価値基準は持つ必要がないと考えることの方である、というのが
この「流行の教科書からは規格はずれ」であり
生き生きとして行動を起す主人公のもつメッセージであるように感じます。
その確固たる意志を「愛すべき」という言葉で
矮小化してしまってるあたり、すでに主題からずれてるような印象です。
パンフレットのくせにしょっぱなからおかしなことを書いてるもんです。
お話は
太っていることが自分の魅力を損ねることだとは全く思っていない主人公トレーシーと、
太っていることだけが自分の持つ問題であると考えている母親と
その太っている母親を太っているからこそ恋している父親、
という家族をひとつの軸として
当時(60年代)殆ど常識として認識されていた「黒人差別」というもうひとつの軸と絡み合いながら進んでいきます。
トレーシーは「とても魅力的に歌って踊る」という「楽しさ」を通して
「太っていることへのネガティブな評価」と「黒人差別」という
ふたつの「時代のカン違い」に、困難に見舞われながらもとても自然に突破口を開いていきます
この「黒人差別」と、
母親に象徴される「流行の規格外の身体を持つことの苦しみ」の、
からまり具合がまた見事なんですね。
トレーシーは黒人の差別抗議のデモを思いつき、自分自身でも参加します。
(差別への抗議の動機はもちろん「好きな仲間と楽しく一緒に踊りたいから」)
それに巻き込まれる形で、なぜか主張がおぼつかないままにうっかり参加している母親。
デモが町を行進し、目前にたくさんの警察が行く手を阻みます。
多くのテレビカメラの取材がきている、緊迫感のあるシーンの中で
母親が突然言います
「カメラに映るなら痩せなきゃ!」
(発言の記憶は正確でないです、ごめんなさい)。
これが、また場違いで素っ頓狂でいきなり日常の感覚に引き戻される
面白いシーンなんですけども、
このシーンはすごいなあ、と思いますね。
本当に、差別されること、ってこういうことですよね。
いかに「それが正当な理由のないこと」「抗議すべき、変わっていくべき事柄」
として認識していても
実際には傷つきやすい心を抱えて「今現在、改善されてはいないその現実の中」で生きている
というのが真実です。
大義を持っていても、
生きるということはもっと些細でデリケートな出来事の積み重ねであり、
「大義」と「傷つきやすさ」というのはひとつ心の中に収めると
場違いで収まりの悪い、時として文脈を壊すものなのですが、
それは実際ふたつながら心にあり続けるものです。
ふたつながらあるからこそ、行動が生まれ、それが人の心に訴えうるものになる
臆病なお母さんが、とても素敵なワンシーンです。
トレーシーがね、いいですよ。
スカートの中で目立つまるいお腹とお尻を
これでもか、と見せながら踊りまくるんですね。
それはもう、「太っているからこそ魅力的なダンス」で。
これは本当に可愛い。
「今まで普通にしゃべってたのに、突拍子もなく突然歌って踊りだすから
ミュージカルは苦手」という方(←私)
でも、楽しく見られますよ。
お勧めです。



コメント
わたしもみましたよ!!コレ。
体型とか全く関係なくすごく面白そうだからみただけなんですけど
基本的に歌もダンスも大好きなので
観てしばらくたってますが踊っています笑
やっぱりノラさんの洞察力・解析力・文章力はすごい
そうそう!!それが言いたかったの!!みたいな・・・
パンフは中身薄っぺらですよね
なんでこの順番で載せんの!?とかもっと映画の写真載せればいいのに!!とか思った
最近の広告が
みんなオンナノコはエビちゃんになりたいと思ってると前提してるような文体だったりする浅はかさを
このパンフから感じました
映画は最高!!
投稿者: みや | 2007年11月19日 17:41
ノラさんの文章がパンフレットに載ったら どれだけの女性達が解放されるでしょうか・・・みやさんのおっしゃるとおり、ノラさんの洞察力・解析力・文章力に感動させられっぱなしです。 聡明さがあふれてますよ♪ もしも私がこの病気になっていなかったら、そのパンフレットを読んでも、おかしいだとか、ちょっとこの表現の仕方はどうなんだ?とか・・・何も考えなかったかもしれません。(このパンフレット以外の情報でも…)それくらい、体型に対する配慮がなされていない発言や情報や言動が世の中に溢れているからかもしれないし、それらに対して異議があったとしても、世の中の流れに従って、「痩せている方が良い」ってという考えのうねりに流されて自分の中に生まれた反発心を諦めて引っ込めてきたのかもしれません。 ある意味、女性の身体に対する世の中の情報や発言に「ちょっと待てよ?」っと 考え直したり、良い意味で疑うことが出来るようになってきたのは、ノラさんのおかげです。
まだまだ、過食&無気力になってしまう私ですが、いつも このブログで希望をもらっています。
ノラさんありがとう♪
投稿者: mimi | 2007年11月20日 15:02
みやさん
本当にあのパンフは酷いですね。
映画が面白いのに、パンフレットがあそこまでつまらない、
というのも珍しいんじゃないですかね。
これ、英語版のパンフだとどんなふうになってるのか、
興味ありますねぇ。
うん、映画は最高です。
見た翌日に、メモ帳持ってセリフ追いながらもう一回見ようかな、
と思ってたんだけど、極度の寝不足で体力たりなくていけなかった・・・^^;
残念だわ。
投稿者: ノラ | 2007年11月21日 00:42
mimiさん
いやいや、照れます^^。
実際「そういうことは当然である」という世の中で生まれて育ってしまえば、
「うん、当然」と思い込むのは自然の流れですよね。
感覚的なレベルでは「外に出るなら靴を履くのが当然」とかというのと
殆ど一緒ですからね。
それが「なんか変じゃん?」って気づくには
トレーシーみたいに「いや、もっと楽しいことしたいもん」という確固たる意志、
ってひとつすごいきっかけですよね。
私、この物語を作った人が、何を考えて「人種差別」と「スタイル」というところを
絡み合わせたストーリーを思いついたのか、
凄く知りたいんですよ。
パンフレットには全く出てこないけども・・・・。
てか、このパンフ、要らない・・・(笑)
投稿者: ノラ | 2007年11月21日 00:44
気に入ってくれて、よかった〜♪(何様(笑))
たしかにパンフはだめだったですね。ジョントラボルタばっかり(・_・;)
でもこうして言われなきゃ「言葉にできない違和感」で終わってただろうなぁ。やっぱり目のつけどころがすごい。
トレーシーの笑顔とダンスみてるとキュンキュンしちゃう☆
たくさんの女の子にみてほしい。一番好きかもな映画になりました。
投稿者: みきねこ | 2007年11月21日 03:19
みきねこ様^^
そーなの、行ってきたのよ。
いつもオモシロイもの紹介してくれてどうもありがとう。
興行的に女装のジョントラボルタが売りなのは当然だけどね。
そうだとしても、物語そのものの履き違えはどうなのか、と(笑)
うん、キュンキュンするね。
一発目の歌ですでに泣きそうだったのが不思議^^
ジョントラボルタも良かったよね。
凄く寄り目のお母さんだと思ってたら、
ジョントラボルタに肉付けした、って書いてあって
「ああ、なるほど」と。
投稿者: ノラ | 2007年11月21日 09:47
実は私ネットの懸賞でこの映画のチケット当てて、今日観てきました(*^_^*)
>「カメラに映るなら痩せなきゃ!」
たしか、「太っていては、カメラには映れない!」こんなニュアンスだったと思います。
このセリフにはすごく共感したので残っています。
パンフレットは購入していませんが、それはひどいですね。
差別に対して反対の映画だと思ったのに。
それを黒人に置き換えれば、「歌もダンスもできるけど、ただ1つの欠点は肌が黒いこと!」っていう感じになりますよね。
そんなんだったらパンフの批判殺到だろうけど、Bigなことに対してはそうならないんですねー。
2つの差別に対して良くないことを伝えている思ったのに。
多分この映画に関わった人はそんな思いで作ったんじゃないと思いますよね。
アメリカでもそんなパンフなのでしょうか・・。
それと泣きそうになったっていうの、私もそうっだったんです!
最初のほうでもう何回か泣いちゃったんですけど。
何で涙が出てきたのかよく分からなかったんですよ。
極度のネタバレ嫌いなので、ノラさんの記事は観たあとに読みましたが、あぁ、私はあの主人公の姿に感動したのか!と気付かされました。
(ちなみに最近の映画って一番の見所!なんてとこをCMで流しちゃうのにすごく不快感感じています。それネタバレじゃないのかよ!みたいな^^;)
う~ん、ノラさんの分析記事、さすがですね!!
投稿者: 明季 | 2007年11月22日 01:24
今日学校の帰りに観てきました!
「1キロ増えるごとにあなたの魅力が増すわ」~♪みたいな歌詞に感動して涙しました(笑)
あと他にもたくさん「うんうん!」って頷けるセリフがあって、勇気でました。
私もしり込みしないでやりたいと思ったことどんどんしなくちゃ!と思いました。
トレーシーのダンス&歌声とっっっても可愛かったですよね~^^
魅力って自分で作るもんなんだなぁと実感しました。
またいい作品に出会えました^^
投稿者: あっこ | 2007年11月27日 21:51
明季さん
あらま、チケット当選うらやましいですっ。
人種差別、というのは、わりとシリアスな問題として受け取られていると思うんですが
体型の話、というのは、単に笑い話だと思ってる人が多いですよね。
そういう視点で見ると「愛すべきカン違い」に見えるんだろうなあ、
と思いますけど、まあでも殆ど何も分かってないですよね^^
そう、私も、一曲目で泣きそうでした!
なぜか全然わかんないんですよね、明らかに泣く曲じゃないのに(笑)
あ、ネタバレ気をつけないといけないですよね。
私、なんでも書きたくなる方だから・・・えへへ。
投稿者: ノラ | 2007年12月01日 10:44
あっこちゃん
うん、あの歌詞爽快でしたね^^。
黒人には、もともと太っていることが美しい
という文化があるんだって聞いたことありますが
メイベルを見ていると
「うん、確かに美しい」って思いますね。
トレーシーのぽちゃっとした感じとは
また全然違う存在感、威厳を感じます。
そういう自分の文化に対する誇り高さと、
それから、その一方で、実は髪をブロンドに染めている、
なんていう、柔軟なところもいい味なんですよねえ。
投稿者: ノラ | 2007年12月01日 10:45